ふくふくの
想い
店舗でのふくふくはなくなりましたが、想いは残ります。
以下長文ですが、是非お読みなって下さい。
過去、虐待の末に子どもが餓死したという耳を塞ぎたくなるような事件が日本でありました。このニュースを知った際は思わず涙が溢れました。何故このような事件が。周りの人間はこの家庭の惨状に気付くことはなかったのか。大変憤りを感じました。
私にも子どもがいます。親の立場として、この子の苦しみ、悲しみを想像した時、大きな絶望感に包まれました。
生活保護を受けて生活をされていた母子が餓死したという事件もありました。生活保護を受けるということは市の職員など福祉関係者が担当します。またこの母親には介護保険制度で担当のケアマネジャーがついていたとのことです。
担当者がついているから大丈夫だろう、生活保護を受けているから大丈夫だろう。事件後、周囲の方々はそう思っていた、と事件を取り上げた新聞記事にそう書かれておりました。
これだけでなく皆様ご存知の通り、他にも悲惨な事件は多々起こっております。
カレー屋ふくふくを開業する前、私は社会福祉士として、またケアマネジャーとして高齢者支援を担当しておりました。だからこそだと思いますが、福祉に関する事件や貧困問題、介護や地域福祉などの問題などに強い関心を持っております。
その根底は、こういった問題に苦しむ方を一人でもなくしたい、という想いからです。
コロナ禍になる前、私は妙高市で活動されているNPO法人あいあう様が行っていた子ども食堂の見学をさせてもらったことがあります。はて、子ども食堂とはなんぞや?当時詳しい知識もなかった私ですが、見学に行き大変感銘を受けました。子どもたちが大勢集まり、食事の前は宿題をし、皆で遊び、大人たちはたくさんの食事の用意、子どもたちの送迎や面倒をみて、そして皆で食事を楽しんだのです。一番印象に残っているのは、皆この食事会を楽しみにされていたとのことでした。
無知な私は、子ども食堂というと「施しをうける」「貧困に苦しんでいる」などネガティブなイメージを持っていましたが、そんなことは全くありません。終始笑顔の絶えない食事会で、正直人見知りの私も大変楽しく、心が温かく満たされた時間を過ごせたのでした。
この子ども食堂の体験がカレー屋ふくふくの原点でした。
カレー屋ふくふくは妙高市白山町にある元バイク屋だった店舗を、DIYでこつこつと一人で改装して出来上がりました。もちろん電気や水道など素人では対応出来ない箇所は業者さんにお願いをしました。
私はDIYなどしたことがない人間で、知識もなくネットで調べながら一つ一つ作業を行っていきました。建築基準法や消防法、食品営業許可の基準などクリアしなければならないことが多く、DIYも飲食店も起業も全て未経験の私にとっては、孤独で、金銭面も苦しく、果たして本当に開業出来るのかと、大きな不安で涙してしまう日もありました。
それでも開業に向けて準備を進めている中、たくさんの救いを受けました。
店舗の家主様に「子ども食堂など地域福祉に貢献出来るような店を目指している」とお伝えしたところ、家主様は月々の賃料を値下げして下さいました。
DIYの様子をSNSで発信していたところ「何かしら協力したい」と、ふくふくの看板を作成して下さる方がおりました。
我が家の保護猫を招き猫のイラストにして贈って下さる方がおられました。
業者さんも私の夢を応援したいと工事料金をぎりぎりまで下げて下さいました。
周囲には私の姿を見て下さっている方、助けて下さる方、応援して下さる方がいる。私は一人ではなく人に支えられて生きているのだと実感し、大変嬉しく、そして生きていることに感謝したのでした。
そして令和5年6月24日、カレー屋ふくふくはオープンいたしました。
まず食事メニューの料金を格安にしました。390円でカレーが食べられます。この物価高の時代ですが、財布の心配をすることなくどんな方でも気軽に食事をしていただきたいという思いからです。
それでも厳しい、お財布がピンチだ、という方に「げんきチケット」というシステムを活用しております。これは奈良県にある元気カレーさんという店舗から始まった「みらいチケット」のシステムを使わせていただいております。店に来られた方がチケットを購入しホワイトボードに貼ります。その後来店された別の方はそのチケットを使えばカレーを一杯無料で食べられるというシステムです。簡単に言えば地域の困っている方や子どもたちを応援するという感じです。
そしてチケットを使用した方ですが、将来的に経済的に余裕が出来た時、子どもだったら大きくなり収入を得た時、次の方のためにチケットを購入し、ホワイトボードに貼っていただければと思います。あなたのその優しさがチケットを介し、循環していきます。地域の福祉が向上する一助になればと思っております。
また、先述しましたあいあう様と連携し、従来のような子ども食堂の開催も行いました。食事の費用は皆様からのげんきチケットを使用させていただき、子どもたちには無料でカレーを提供させていただきました。子どもたちは皆笑顔でした。それからも各団体様と連携し、子ども食堂を定期的に続けております。
また支援の必要な方へ直接お弁当を届けるフードパントリーへの協力や、妙高市役所を通じフードドライブ活動への協力もさせていただいております。
その他にも店内には漫画本を多数取り揃えたり、囲碁や将棋を用意したり、物々交換所を設けたりと、地域の方々が気軽に来れる店になるよう取り組んでおります。
ふくふくは活動が認められ、第4回新潟SDGsアワード 社会部門 優秀賞を受賞いたしました。
こういった取り組みからお分かりいただけるかと思いますが、ふくふくは食事だけでなく人と人が触れ合える居場所作りを目指しております。そのために従来型ではなく常設の子ども食堂、地域食堂を目指しております。
本来子ども食堂などは○月○日○曜日の○時~と開催日を決めますが、皆その時目掛けてお腹を空かすわけではありません。人間、毎日お腹が空きます。お腹が空いた時、困った時、人と触れ合って食事したい時、いつでもあそこへ行けばお腹も思いも満たされる、ふくふくはそんな存在になりたいと思っております。
ふくふくがメニューをカレーにした理由ですが、日本全体のお米の消費量が減っていると聞きます。そしてそれが減反に繋がっているとのことです。
第一次産業である農業は国の根幹だと私は思っております。お米の消費量を増やすため、そして地域のお米を使用し地産地消の助けになるよう、お米をいっぱい食べるカレーはどうかと考えました。
また私は農業と福祉の連携、いわゆる農福連携についても関心があり、将来的にふくふくとして何かしらの支援や障碍者雇用も想定しております。
そしてカレーといえば子どもの好物の一つです。子ども食堂を考えた際、子どもたちが喜ぶようにとカレーを選んでおります。
ただ現状では思うようにお客様の来店が伸びず非常に経営が苦しい状況です。安過ぎる価格を見直すよう多方面からご助言をいただいております。しかしこのような物価高の時代だからこそ、気軽にお財布の心配をすることなく食事が出来るお店を夢見ています。
親がふくふくで昼食代を節約出来た、その分子どもの夕飯が少しでも豪華になる。休日の昼、子どもとふくふくへ行き食事の用意の手間を減らせる、その分子どもと過ごす時間を増やせる。子どもたちが友達同士でふくふくに行き、げんきチケットで食事をする。その後そのままふくふくで宿題をしたって良い。ふくふくでちょっと楽が出来る。そのちょっと増えた楽で生活に余裕が出来る。そんな居場所を維持していきたいというのが私の本音です。
ふくふくは地域のために存続していかなければなりません。子ども食堂や地域食堂はただ単に貧困の解決だけではありません。子どもももちろんですが大人も関係性の貧困と呼ばれる時代です。孤食を防ぎ他者とのつながりを再構築する場所。人は一人ではない、皆に支えられて生きていると実感出来る繋がりが生まれる場所なのです。その他にもフードロスの問題や子どもの人間性の成長を促す場など多くの機能を有した場所なのです。
今一緒に働いて下さっている方々も、様々な理由がありフルタイムでの就業が難しい方々です。ふくふくはそんな方たちの就労も支援していきたいと考えております。いづれは就労支援も事業の一つになればと良いと思います。
冒頭に申しました子どもの虐待、貧困ゆえの餓死。ふくふくの存在は直接その方たちを救う手段ではないかもしれません。ですが、もしそういった方たちの近くにふくふくがあったら「子育てや家事に行き詰っているならふくふくへ行って来な、色々話を聞いてくれる店主がいるよ」「ふくふくに行ってご飯を食べな、お腹が減っていたらろくな考えも出てこないよ」と勧めてくれる人がいたなら、その方たちに地域の優しさを伝えることが出来ていたら、少しでも救える命があったはずです。様々な理由で苦しんでいる人を一人でも救いたい。そのために私は自分なりの福祉を実現するためにふくふくを開業したのです。伝えたいのは「あなたは一人じゃない」
私は命を懸けて地域福祉向上のため尽力して参ります。
ふくふくは一店舗では足りません。ふくふくは増えていかなければなりません。ふくふくでなくても良いのです、ふくふくの想いを、ふくふくの理念を持つ飲食店が増えてくれるだけでも良いのです。誰でも気軽に来れて、障害があっても働けて、人と繋がりが持てて、お金がなくてもご飯が食べられて、人の優しさに触れることが出来る。そんな場所があなたの街に必要なのです。
そしてふくふくがなくなる時は、そんな苦しい思いをする人がいなくなった時であるように願います。
長くなりました。最後まで読んでいただき感謝申し上げます。
カレー屋ふくふく 保坂正人